今後の避難行動や避難所のあり方について

***地区防災計画策定(変更)の際に考慮すべき課題の提案***

 昨年の能登半島地震以降、富山県民の防災意識はこれまで以上に高まりを呈して おり、県内各地区での地区防災に関するルールづくり(いわゆる地区防災計画)の必要性が注視されつつある。本会としては、これまで同様、同計画の策定・実施に支援していくこととしているが、今回、その支援にあたり国や富山県の動向やデータ等から想定される懸念材料を洗い出してみた。

【在り方の考察のために】

1.新型コロナウイルス感染拡大(いわゆるパンデミック)を経験し、自然災害に対する避難行動に変化が生まれている。密を避けるために集団避難から分散避難が推奨され、避難所では感染拡大防止対策として、避難者の受付段階で体調不良か否かを分けて、体調不良者を教室などへの誘導を行い、一時的な隔離を実施することが推奨されている。現実として、小中学校の避難場所は、一斉開放(教室棟の開放など)は最終であり、一般的に体育館やトイレ等の部分開放から始まる。よって、体調不良者の隔離スペースを体育館内で設ける必要がある。

2.内閣府では、そもそも避難とは「難」を「避」けることであることや、避難所そのものが密になる可能性が高いことから、従来の「行政が指定した避難場所への立退き避難」に加え、「安全な親戚・知人宅への立退き避難」「安全なホテル・旅館への立退き避難」「屋内安全確保」の4 種類(下記図 1)の避難を推奨している。このように、避難方法が多様化していることから、避難対象者の避難先の把握が重要となる。⇒安否確認訓練とともに避難先把握訓練

3.少子化(下記表1)や高齢化(下記表2)の進展と避難行動を考えた場合に、小中学校の統廃合と同時に、これまでの指定避難場所も統廃合される可能性が考えられ、より遠距離の避難行動が必要となる場合も懸念される。よって、避難用持出し品を持参しての徒歩避難(原則)はこれまでと変わらずに可能なのであろうか?

4.高齢化に伴い、より近距離での避難所が求められるケースが増えることが想定される。いわゆる避難所の分散化である。その場合、自治体によっては、「届け出避難所」として開設可能であるが、限定された人員での自主防災組織よる運営や避難者用の備蓄品等のストックが懸念される。

5.「令和6年能登半島地震に係る災害対応検証会議」の報告では、発災時の避難行動の手段として 75%が車両であったことから、今後、適切な避難のあり方(徒歩避難、車両避難のすみ分け等)を検討するとしている。